パッキン・メカニカルシール交換で守る工場の安全
本コラムは、工場の現場責任者様や現場作業員様に向けて、パッキン・メカニカルシールの交換とメンテナンスをめぐる課題と解決の手がかりを、経済産業省や厚生労働省、消防庁、環境省など公的機関が公表する資料をもとに、生産現場ですぐに役立つ形でわかりやすくまとめたものです。
工場の生産現場では、ポンプや冷凍機、化学設備などの回転機械が休むことなく稼働しています。その内部でひっそりと働いているのが、パッキンやメカニカルシールと呼ばれる軸封部品です。これらは液体やガスの漏れを防ぐ小さな部品でありながら、ひとたび劣化すると生産停止や事故につながる大きな課題を生み出します。しかし、その重要性ゆえに、いつ交換すべきか、どのような法令上の義務があるのか、どこまでメンテナンスをすれば安全といえるのかを正確に把握できている現場は、決して多くありません。
そこで本コラムでは、経済産業省、厚生労働省、消防庁、環境省という日本の中央省庁・官庁、および産業保安監督部などの官庁管轄公的機関が公表している一次情報のみを根拠として、工場設備におけるパッキン・メカニカルシールの交換とメンテナンスに関する15の視点を整理しました。私たち
工場工事センター匠.comは、生産技術・保全技術のご担当者様が抱える現場課題に寄り添い、法令に基づいた確実な解決策をご提案することをスタンスとしています。それでは、各テーマを順にひも解いていきます。
1.高圧ガス製造設備における軸封装置(メカニカルシール)の定期自主検査義務と点検実務
冷凍機やコンプレッサーを備える工場では、
高圧ガス保安法に基づく規制が軸封装置にも及びます。同法の関連規則では、一定規模以上の高圧ガスを製造する第二種製造者に対して、定期自主検査の実施が義務付けられています。この検査は単なる推奨事項ではなく、法令上の義務であるという点が、現場責任者様にとって最初に押さえるべき課題といえます。
具体的には、一般高圧ガス保安規則や冷凍保安規則で定める容積または冷凍能力以上の設備を保有する事業者は、認定を受けた検査記録を作成し保存する必要があります。また、認定を受けた者が作成する検査の記録は、記載事項が法定要件に合致し、必要に応じて直ちに確認できる状態であれば、電磁的方法による記録でも差し支えないとされています。つまり、紙の台帳だけでなくデータでの記録管理も認められているため、現場のデジタル化を進めながら法令順守を両立させることが可能です。
このように定期自主検査は、軸封部の摩耗や劣化を早期に発見し、突発的な漏えいを未然に防ぐための仕組みとして機能しています。パッキン・メカニカルシールの交換タイミングを検査結果に基づいて判断することで、計画的なメンテナンスが実現し、生産ラインの予期せぬ停止という課題を解決へと導くことができます。
工場工事センター匠.comでは、こうした法定検査の周期に合わせたメンテナンス提案を行っております。
2.高圧ガス事故事例にみるメカニカルシール破損による漏えいの発生要因務
法令だけでなく、実際の事故事例を知ることも課題解決の近道です。
経済産業省東北産業保安監督部が公表している高圧ガス事故一覧表には、メカニカルシールの破損に起因する漏えい事故が複数記録されています。ある事例では、クラッチのロックにより軸シール部のメカニカルシールが破損し、漏えいが発生したと推定されています。
さらに
消防庁がまとめた別年度の高圧ガス事故一覧表では、長期連休で停止させていたポンプを再稼働させる際に、ドライ運転となったことでメカニカルシールの表面が摩耗し、漏えいに至った事例も報告されています。液送ポンプは液体ガス自体がメカニカルシールを保護する役割を担っているため、液体が満たされていない状態での運転は設備を守るうえで避けるべき運転方法とされています。
より新しい報告では、配管等の経年劣化や設備稼働停止の影響でメカニカルシール部の密閉が弱まり、隙間から漏えいが発生したと推定される事例も示されています。これらの事例に共通するのは、稼働と停止の切り替え時、そして経年劣化への対応の遅れが漏えいの引き金になっているという点です。したがって、パッキン・メカニカルシールの交換は稼働中の摩耗だけでなく、停止期間中の設備状態にも注意を払いながら判断すべき課題であるといえます。
3.工場プラント内の危険区域設定ガイドラインにみるポンプ軸封部の防爆リスク評価
化学プラントや石油関連設備を抱える工場では、可燃性ガスや引火性蒸気が滞留しうる区域を適切に区分することが求められます。
経済産業省が策定した「プラント内における危険区域の精緻な設定方法に関するガイドライン」では、ポンプのシール部やフランジガスケットの破損によって生じる漏えいについて、緊急の修理や停止を伴う故障は通常運転の一部分とも破局的な事故ともみなさないという注記が示されています。
このガイドラインでは、高圧系の重油脱硫反応塔へ水素を供給する配管のフランジ部やコンプレッサー摺動部を対象とした危険区域のリスク評価事例が紹介されており、常圧蒸留装置のフィードポンプ摺動部も評価対象として挙げられています。つまり、ポンプの軸封部は日常的な保全対象であると同時に、防爆設計上のリスク評価対象でもあるという二重の重要性を持っています。
このため、パッキンやメカニカルシールの交換計画を立てる際には、単に部品の寿命だけでなく、その設備が置かれている危険区域の区分や、漏えい時に想定される爆発性雰囲気の広がり方まで含めて検討することが望まれます。
工場工事センター匠.comでは、こうした防爆上の観点も踏まえたうえで、軸封部のメンテナンス提案を行うよう努めています。設備の安全性向上という課題に対して、法令に基づいた解決策を積み重ねることが、事故防止の第一歩になります。
4.石油コンビナートの事故防止手引きが示すフランジ・軸封部漏えい対策
消防庁特殊災害室が公表している「石油コンビナートにおける事故分析を踏まえた事故防止の手引き」では、漏えいが生じている代表的な箇所として、配管のフランジ継手、閉止フランジ、ポンプのメカニカルシール、混合槽のブリーザーバルブが挙げられています。この手引きは、石油コンビナート災害防止に関する関係省庁の連絡会議を経て取りまとめられたものであり、信頼性の高い一次情報といえます。
同資料では、事故で最も多い事例が漏えいであり、そこから可燃性流体への着火による火災や、滞留した可燃性ガスへの着火による爆発に至るケースがあると指摘されています。特に石油・化学・火力発電の分野では、ボルトの締め付けや継手の締め付けに起因する漏えいが多いことも明記されています。
この指摘は、パッキン・メカニカルシールの交換作業そのものだけでなく、交換後の締め付けトルク管理や組み立て精度がいかに重要であるかを物語っています。せっかく新しい部品に交換しても、締め付けが不十分であれば漏えいという同じ課題が再発してしまいます。
工場工事センター匠.comでは、交換作業の最終段階である試運転や漏れ確認まで一貫して対応することで、こうした再発リスクの解決に努めています。
5.危険物取扱所における消防法上の定期点検制度とポンプ設備の漏れ点検義務
危険物を貯蔵または取り扱う製造所、貯蔵所、取扱所については、
消防法第14条の3の2に基づく定期点検制度により、点検の実施と記録の作成・保存が義務付けられています。対象となる施設は、指定数量の倍数などに応じて政令で定められており、ポンプ設備を含む取扱所もその対象に含まれます。
点検の目的は、製造所等の位置、構造及び設備が技術上の基準に適合しているかどうかを定期的に確認することにあり、点検事項や点検実施者、記載事項まで細かく規定されています。地下タンクや地下埋設配管については、加圧や減圧による気密試験を用いた漏れの点検方法も具体的に定められています。
こうした制度の存在は、危険物を扱う工場においてポンプ設備からの漏れが単なる設備トラブルではなく、法令上の管理対象であることを示しています。パッキン・メカニカルシールの交換履歴と定期点検記録を紐づけて管理することは、法令順守という課題を解決するだけでなく、万一の立入検査の際にも説得力のある証拠として機能します。この観点からも、日頃からの記録整備が欠かせません。
6.工場設備の保全作業における労働安全衛生規則第107条のパッキン交換時運転停止義務
パッキンやメカニカルシールの交換作業は、多くの場合ポンプや回転機械を止めて行う必要があります。
労働安全衛生規則第107条では、機械の掃除、給油、検査、修理または調整の作業を行う場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、機械の運転を停止しなければならないと定められています。ただし、運転中に作業を行わなければならない場合には、危険な箇所に覆いを設けるなどの措置を講じることで対応するとされています。
この規定は当たり前のように思えるかもしれませんが、
厚生労働省がまとめたリスクアセスメント資料集に示された実際の労働災害事例では、点検や修理の最中に他の作業員が誤ってスイッチに触れてしまい、回転部に挟まれるといった事故が繰り返し報告されています。ポンプからアルカリ液が噴出して作業員の目に入り薬傷を負った事例も、同資料に記載されています。
したがって、パッキン・メカニカルシールの交換作業に着手する前には、必ず電源を遮断し、誤操作防止の表示や施錠を行うことが安全確保の基本です。この一手間を惜しまないことが、交換作業そのものを安全に完了させるための最大の解決策になります。工場現場作業員様には、慣れた作業であっても毎回この手順を徹底していただくことをお勧めします。
7.回転軸まわりの保全作業にみる「はさまれ・巻き込まれ」災害防止
厚生労働省が示す機械によるはさまれ巻き込まれ災害防止のポイントによれば、機械災害の防止には「隔離の原則」と「停止の原則」という二つの考え方があるとされています。柵や囲いといったガードを設けて機械の稼働範囲に身体の一部が入らないようにすることに加え、稼働範囲に身体が入る場合にはインターロックなどにより確実に機械を停止させることが求められています。
彦根労働基準監督署がまとめた製造業の労働災害防止対策資料では、モーター、チェーン、ギヤ、ローラー、シリンダーなど、はさまれ・巻き込まれが発生しやすい箇所が数多く紹介されています。ポンプもその対象設備として挙げられており、はさまれ災害の主な原因は、機械の調整や復旧などの作業時に停止を行わなかったこと、そしてカバーなどにより危険部分が隔離されていなかったことにあるとされています。
パッキン・メカニカルシールの交換作業は、回転軸に近い位置での分解・組み立てを伴うため、まさにこの「はさまれ・巻き込まれ」のリスクが高い作業のひとつです。作業前の指差し呼称や、複数人での声かけ確認といった基本動作を徹底することが、こうした災害を防ぐための現実的な解決策となります。日々の慣れが油断につながらないよう、現場責任者様には定期的な安全教育の実施をお願いしたいところです。
8.化学設備における特定化学物質障害予防規則のパッキン材質選定基準
化学物質を取り扱う設備では、パッキンの材質そのものが法令で規定される場合があります。
特定化学物質等障害予防規則の施行についての通達では、接合部にパッキンを使用する際、接合部の形状に応じた適切な形状及び寸法であり、かつ取り扱う物質の種類及び状態に応じて必要な耐水性、耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、耐圧性等の化学的または物理的性質を有する材料を用いることが求められています。
さらに同通達では、接合面を相互に密接させるとは、接合面の形状、寸法、仕上げの程度等を適切にすることにより、対象物質が漏えいしないよう接合させることを意味すると解説されています。これは単なる推奨事項ではなく、特定化学物質を扱う設備における法令上の要求事項です。
また
特定化学物質障害予防規則本体では、特定化学設備の設備内部やふた板、フランジ、バルブ、コックなどの状態を対象とした定期自主検査についても定められており、点検を行った際には記録を作成し3年間保存することが義務付けられています。これらの規定から分かるように、化学設備におけるパッキンの交換は「同等品であれば何でもよい」というものではなく、取り扱う物質の性状に応じた材質選定という専門的な課題を含んでいます。
工場工事センター匠.comでは、取り扱い物質の特性を踏まえたパッキン選定のご相談にも対応しております。
9.工場の化学プラントにおけるリスクアセスメントとメカニカルシール・パッキン漏えい災害事例
化学プラントにおける災害防止のためには、事業者自らが危険源を洗い出すリスクアセスメントの実施が重要とされています。
厚生労働省・労働安全衛生総合研究所の技術資料では、プロセスプラントにおいて漏洩・火災・爆発・破裂などが発生することをプロセス災害と定義し、危険源から中間事象を経て災害に至るシナリオを事前に想定することの重要性が説明されています。
また、一定の化学物質を取り扱う事業者に対しては、平成28年6月の改正労働安全衛生法の施行に伴い、リスクアセスメント等の実施が義務化されています。この制度は、化学プロセス産業のうち中小規模事業場ではリスクアセスメントの実施割合が低いという課題を背景に導入された経緯があります。
実際に
厚生労働省の職場のあんぜんサイトに掲載された災害事例では、化学プラントの設備改築工事中に配管のフランジ部からわずかに漏洩した化学薬品が作業者に付着し、中毒を引き起こした事例が報告されています。この事例は、フランジを緩めた作業とその後のスチーム洗浄という組み合わせが漏洩の引き金になったことを示しており、パッキン・メカニカルシールまわりの作業では、周辺で行われる別の作業との調整も含めたリスクアセスメントが欠かせないことを教えてくれます。
10.貯油・薬液設備における水質汚濁防止法の事故時措置とパッキン劣化対応
工場が保有する貯油施設や薬液タンクからパッキンの劣化を通じて油や有害物質が漏出した場合、
水質汚濁防止法における事故時の措置の対象となります。同法第14条の2では、特定施設の破損その他の事故が発生し、有害物質を含む水や生活環境に被害を生ずるおそれがある水が排出、または地下に浸透するおそれがあるときは、直ちに応急の措置を講じるとともに、速やかに事故の状況及び講じた措置の概要を都道府県知事に届け出なければならないとされています。
貯油施設等を設置する工場又は事業場の設置者についても同様の届出義務があり、油を含む水の排出又は浸透の防止のための応急の措置を講ずることが求められています。
環境省が示す水質汚濁防止法改正の施行通知では、事故により生ずるおそれがある被害とは、浄水場における取水停止や漁業被害、油膜の発生などが該当するとされています。
この制度から分かるのは、パッキンの劣化による油の滲み出しであっても、それが公共用水域や地下水に到達するおそれがある場合には、法令上の届出対象になり得るという点です。日頃からの外観点検により微小な滲みの段階で発見し交換する体制を整えることが、事故時の措置という重い対応を避けるための現実的な解決策になります。
11.事業場敷地内の地下水汚染未然防止マニュアルにみる配管・ポンプ部の点検管理
環境省が公表している「地下水汚染の未然防止のための構造と点検・管理に関するマニュアル」は、有害物質を扱う施設における構造基準や定期点検の内容を体系的にまとめたものです。同マニュアルは、有害物質の漏えいや地下浸透の事故が発生した場合の対応として、水質汚濁防止法に基づく事故時の措置の制度を紹介するとともに、地下水汚染が発生してしまった場合の浄化技術についても解説しています。
同マニュアルでは、規制の対象となる施設本体だけでなく、付帯する配管等や排水溝等の範囲、さらには施設以外の場所における有害物質を含む水の貯蔵場所や作業場所における留意事項までが詳細に整理されています。ポンプや配管の継手部は、まさにこうした付帯設備の代表例といえます。
パッキン・メカニカルシールからの微量な漏れは、床面のコンクリートのひび割れなどを通じて地下に浸透するリスクをはらんでいます。そのため、単に設備単体の点検にとどまらず、設備が設置されている床面や周囲の防液堤の状態まで含めた総合的な点検管理が、地下水汚染という取り返しのつかない課題を未然に防ぐ解決策になります。
12.PRTR制度対応からみる工場の軸封部漏えい量の自主管理
経済産業省が所管する化学物質排出把握管理促進法、いわゆる化管法は、人の健康や生態系に有害なおそれのある化学物質について、環境中への排出量及び廃棄物に含まれての移動量を事業者が自ら把握して行政庁に報告する制度です。この制度はPRTR制度とSDS制度を柱としており、経済産業省及び環境省が共同で所管しています。
経済産業省のPRTR制度に関する解説ページでは、第一種指定化学物質を一定割合以上含有する製品を取り扱う工場は、年間の取扱量や排出量を把握する必要があると説明されています。この排出量には、大気、水、土壌への排出が含まれており、パッキンやメカニカルシールからの漏えいによって発生する揮発や漏出も、対象物質を扱う設備であれば把握対象に含まれる可能性があります。
つまり軸封部の漏えいは、単なる設備トラブルではなく、事業者が自ら把握し届け出るべき化学物質管理の一部として位置づけられているのです。パッキン・メカニカルシールの交換履歴と漏えい量の記録を対応づけて管理することは、PRTR届出データの精度向上という観点からも意義のある取り組みといえます。
13.給水設備における水道施設点検・維持修繕ガイドラインとポンプ軸封部保守
工場に併設される自家用の給水設備や送水ポンプ場についても、公的機関が示す点検の考え方は参考になります。
厚生労働省が策定した「水道施設の点検を含む維持・修繕の実施に関するガイドライン」では、水道法第22条の2に基づき、水道施設を良好な状態に保つための維持・修繕を行わなければならないと定められています。
同ガイドラインでは、水道施設の状況を勘案して流量、水圧、水質その他の運転状態を監視し、適切な時期に施設の巡視を行い、清掃その他の措置を講ずることが基準として示されています。送水ポンプ場や配水ポンプ場に関する項目も個別に設けられており、ポンプ本体の点検についても具体的な記載があります。
このガイドラインは主に水道事業者を対象としたものですが、その点検の考え方、すなわち日常監視と定期巡視を組み合わせて異状を早期に発見し、必要な修繕につなげるという発想は、工場内のあらゆるポンプ設備に応用できる普遍的な解決策です。パッキン・メカニカルシールの交換タイミングも、こうした日常監視データの蓄積から見えてくることが少なくありません。
14.産業保安DX(スマート保安)による工場ポンプ軸封部の予知保全
近年、経済産業省は「スマート保安」と呼ばれる取り組みを推進しています。
経済産業省が公表したスマート保安先進事例集では、電力、ガス、高圧ガス等の産業保安分野において、IoT、ビッグデータ、人工知能、ドローンといった新たな技術の導入を通じ、安全性と効率性を追求しつつ保安レベルを持続的に向上させるための取り組みと定義されています。
経済産業省がまとめたスマート保安の促進に関する資料では、センサーやIoTデバイスによって常時監視できる範囲が遠隔地や暗所等にまで拡大し、取得した大量のデータをAIによって分析することで、高度な判断による異常検知や運転最適化が可能になると説明されています。定期的に行っている保守・点検を、実際の劣化状況に応じたものへと移行させる実証も進められています。
こうした技術を軸封部の保全に応用すれば、温度や振動、微小な漏えいの兆候をセンサーで常時捉え、パッキン・メカニカルシールの交換時期を経験や勘だけに頼らず、データに基づいて判断できるようになります。設備の突発停止という現場の大きな課題を、予知保全という形で解決する道筋が、国の施策としても後押しされているのです。
15.設備保全作業における熱中症予防対策とパッキン・メカニカルシール交換時の暑熱対策
パッキンやメカニカルシールの交換作業は、機械室やプラント配管付近といった高温になりやすい環境で行われることが少なくありません。
厚生労働省が示す「職場における熱中症の予防について」では、暑さ指数(WBGT)が基準値を超え、又は超えるおそれのある高温多湿作業場所においては、発熱体と労働者の間に熱を遮ることのできる遮へい物等を設けることや、適度な通風又は冷房を行うための設備を設けることを求めています。
さらに
滋賀労働局が周知している改正内容によれば、令和7年6月1日からは、改正労働安全衛生規則の施行により、熱中症の重篤化を防止するため、早期発見のための体制整備や、重篤化を防止するための措置の実施手順の作成、関係作業者への周知が事業者に義務付けられています。統計上、令和6年の職場における熱中症による死傷者数は1,195人にのぼり、業種別では建設業と製造業で全体の約4割を占めているとされています。
こうしたデータは、工場の設備保全作業が熱中症のリスクと無縁ではないことを明確に示しています。パッキン・メカニカルシールの交換作業を計画する際には、作業時間帯を気温の低い時間帯にずらす、作業前後にWBGT値を確認する、水分と塩分をこまめに補給できる環境を整えるといった配慮が欠かせません。安全な作業環境の確保こそが、質の高いメンテナンスを継続するための土台となります。
結論・まとめ
ここまで、高圧ガス保安法や消防法、労働安全衛生法、水質汚濁防止法、化管法、水道法関連のガイドライン、そしてスマート保安や熱中症予防対策といった15の切り口から、工場設備におけるパッキン・メカニカルシールの交換とメンテナンスをめぐる課題を整理してきました。それぞれの制度は所管する省庁こそ異なりますが、共通しているのは「小さな漏れを早期に発見し、計画的に交換することが、事故防止と法令順守の両方につながる」という考え方です。
パッキン・メカニカルシールの交換は、部品そのものを取り替える単純な作業に見えて、実際には防爆設計や化学物質管理、労働安全衛生、環境保全、そして近年ではデジタル技術による予知保全まで、幅広い専門知識を必要とする課題です。だからこそ、法令の背景を理解したうえで、現場の実情に合わせた解決策を選び取ることが、生産技術・保全技術のご担当者様には求められています。
私たち工場工事センター匠.comは、こうした複雑な課題に対して、イーグル工業株式会社をはじめとする信頼性の高いメーカーとの協業を通じて、確かなメンテナンス技術と交換工事をご提供してまいりました。ポンプや冷凍機の分解調査から、メカニカルシールの洗浄・交換、組み替え、そして試運転による漏れ確認まで、一貫した工事の進め方で生産停止のリスクを最小限に抑えるお手伝いをしています。パッキンやメカニカルシールの交換、そして日々のメンテナンスに関するお悩みがございましたら、営業時間内2時間以内のご返信を心がけておりますので、お気軽にお問い合わせください。私たちは、日本全国のモノづくり企業様のお役に立ちたいという思いを胸に、今後も現場に寄り添った情報発信と技術提供を続けてまいります。
(監修者:吉岡興業株式会社 代表取締役 吉岡 洋明)
【参考資料・関連記事】
・経済産業省「高圧ガスに関する規制について」
・経済産業省東北産業保安監督部「高圧ガス事故一覧表」
・消防庁「高圧ガス保安法関連事故一覧表」
・経済産業省「プラント内における危険区域の精緻な設定方法に関するガイドライン」
・消防庁特殊災害室「石油コンビナートにおける事故分析を踏まえた事故防止の手引き」
・消防庁「危険物施設の保安検査及び定期点検の制度概要」
・厚生労働省(新潟労働局)「機械によるはさまれ巻き込まれ災害防止のポイント」
・彦根労働基準監督署「製造業における労働災害防止のイロハ」
・彦根労働基準監督署「製造業における労働災害防止対策(設備的対策)」
・厚生労働省「特定化学物質等障害予防規則の施行について」
・厚生労働省「特定化学物質障害予防規則」
・厚生労働省・労働安全衛生総合研究所「プロセスプラントのプロセス災害防止のためのリスクアセスメント等の進め方」
・厚生労働省「職場のあんぜんサイト」災害事例
・環境省「水質汚濁防止法における事故時の措置」
・環境省「水質汚濁防止法の一部を改正する法律の施行について」
・環境省「地下水汚染の未然防止のための構造と点検・管理に関するマニュアル」
・経済産業省「化学物質排出把握管理促進法」
・経済産業省「PRTR制度」
・厚生労働省「水道施設の点検を含む維持・修繕の実施に関するガイドライン」
・経済産業省「スマート保安先進事例集」
・経済産業省「スマート保安の促進」
・厚生労働省「職場における熱中症の予防について」
・滋賀労働局「職場における熱中症対策が義務化されます」
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