マネジメントメッセージ

マネジメント・メッセージ 2022年5月(1/5)

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全従業員の給与をおなじにしてしまうという経営をしている会社を見た。
健康食品のネット販売をしているその会社には、もちろん社長以外の全従業員に役職はない。
全従業員の給与をおなじにするメリットは、まず、給与や社会保険や税がおなじなので人事労務費がほとんど要らないということだ。いま流行りのRPAで簡単に処理できてしまうという。
全従業員が平社員であるため、会議もオンラインで全員参加でやってしまうそうだ。
社員が役職者に育つようにと、社員教育をする必要もない。全従業員に役職がないので組織について考える必要がなく、経営効率が良いそうだ。
また、信賞必罰を考えないで済むということもメリットだそうだ。全従業員の給与がおなじなので、社員の活躍に応じて賞与の配分を考える必要もなく、重大な過失があろうとペナルティを科して対象者の給与をいじる必要もない。
人件費を簡単に計算できるから、将来の事業計画も立てやすく、「なんのデメリットもない」とその経営者は言っていた。

この会社に、違和感を感じた。
それならアルバイトでいいじゃないか、と。正社員を雇う必要などないではないか、と。
活躍しても、重大な過失を犯しても、給与が変わらない。みんなずっとおなじ給与。そんな信賞必罰のない会社で、顧客にお役立ちし、未来を切り拓けるのか、と。
この会社は、信賞必罰や社員教育といったわずらわしいことから逃げているだけではないか、と。
これは決まったおなじものしか取り扱わない販売会社だからできることなのではないか、と。
そもそも人間に頼らない、人間をまったくあてにしていない、ネット販売の会社だからできることなのではないか、と。
この会社は、この先十年、二十年と存続するのだろうか、と。

私たちの会社は販売会社ではなく、営業会社だ。営業のやり方もネット一辺倒の会社ではない。 人間が主役の会社だ。
私たちの会社も、「うちは全社員の給与がおなじで、役職もなくて、活躍しても重大な過失を犯しても信賞必罰のない会社ですよ」と打ち出して、それに魅力を感じて入って来る社員がいたらと想像してみたが、なんの発展も成長も感じない。
活躍した社員には賞与で謝し、リーダーシップのある社員には役職給で謝し、 重大な過失を犯した社員にはペナルティを科し、業績が悪ければ経営者の給与を大幅にカットする。
顧客にお役立ちし業績が良ければ給与があがる、顧客にお役立ち出来なかったら給与がさがる、という価値観を伝え続けることが、会社を永遠に存続させるのだと確信する。
前述の経営者は、「このやり方に不満を感じている社員はひとりもいない。最初から説明して入ってきているから当たり前かも知れないけれど」と言っていた。
そこには共感した。私たちの会社の理念にも、最初から、「『役立ち』を追求する者を評価し、『徳』ある者には登用で、『才』ある者には報奨で謝してゆく。」とある。その説明もじゅうぶんにしている。