マネジメントメッセージ

マネジメント・メッセージ 2018年8月(2/3)

マネジメント・メッセージ 一覧へ

語り継ぐことは、過去と今を生きる私たちの、未来への責務だ。

以前、沖縄戦の際に住民83人の方が集団自決をされた洞窟 チビチリガマを荒らしたという少年犯罪事件があった。
慰霊や反戦・平和への祈りをたむける場所が、少年たちにとっては心霊スポットになっていたのだという。
当然少年たちもこの場所が、慰霊や反戦・平和への祈りをたむける場所だという教育を受けていたはずだ。
それなのに少年たちは、肝だめしや心霊スポットのイメージの方が勝ってしまったのだ。

チビチリガマについて、教育される側のこの少年たちと教育する側のあいだには、両者共通の【 間(ま) 】というものがなかったのだろう。両者共通の【 間 】がなければ、確かな実感を持って、両者が結びつくことはない。
チビチリガマについて教育する側は、熱心に歴史を勉強し、慰霊や反戦・平和への祈りと覚悟を持って、この少年たちにも話をしていたに違いない。
しかし、教育される側の少年たちは、チビチリガマの話を、「今の俺たちには関係ねえし」「そんな悲惨で暗い昔の話なんか昼から聞きたくねえし」という感じで軽く受け止めていたのだろう。
教育する側のチビチリガマは、慰霊や反戦・平和への祈りをたむける対象であったのに対し、少年たちにとってのチビチリガマは、自分たちには関係がない悲惨で暗い遠い昔の話だったのだ。
これではチビチリガマが、両者共通の【 間 】になりようがない。両者共通の【 間】がないのだから、両者が結びつくことなどなくて当たり前だ。

話は移るが、私たちの会社はかつて、借金13億、未回収金3億、不良在庫8千万という有り様で、名ばかりリーダーたちやその仲良し社員たちにオモチャにされていた。
それを今のような正常な会社にするために、あの頃からおられた社員の方々と私は、いくつもの辛く険しい坂道を、まさに血の滲むような思いで越えてきた。
だから、あの頃からおられる社員の方々と私にとって、今現在も共通する【 間 】とは、「もう二度とあの頃みたいな会社には戻りたくない」という強く持続した意志だ。私たちは、「もう二度とあの頃みたいな会社には戻りたくない」という共通の【 間 】で結びついているのだ。
それは、「もう二度とあのような戦争を起こしてはならない」という思いを、チビチリガマを通して語り継ぐ方々と同じだ。

しかしながら、チビチリガマを心霊スポットととらえてしまう少年たちと同じようなことが、今、私たちの会社でも起きている。
私たちの会社がかつて、借金13億、未回収金3億、不良在庫8千万という有り様で、名ばかりリーダーたちやその仲良し社員たちにオモチャにされていたという記憶がない社員たちが、現在私たちの会社でたくさん働いているからだ。
正常な会社にするために、理念をつくり、それにすがりつき、考え方や感じ方のベクトルを真剣白刃で合わせていった記憶がない社員たちが、現在私たちの会社でたくさん働いているからだ。
「もう二度とあの頃みたいな会社には戻りたくない」という記憶のない社員たちに、私たちが生半可な気持ちで教育したところで、おそらく彼らの一部には、私たちが今現在も大切にしている理念など、私たちが今現在も大切にしている考え方や感じ方など、たんなる辛気くさいものとしか感じてもらえないのだろう。

私たちにとって理念とは、私たちにとって考え方や感じ方とは、「もう二度とあの頃みたいな会社には戻りたくない」という強く持続した意志であり、私たちのあいだにある共通の【 間 】だ。
この【 間 】によって私たちは結びつき、今現在、あの頃みたいな会社ではないのである。
私たちはこころして、「もう二度とあの頃みたいな会社には戻りたくない」という強く持続した意志で、あの忌まわしい過去を知らない社員たちに語り継ぐ。
そして、もう二度とあの頃みたいな会社にはしない。もしその芽が出てくるようであれば、語りに語り継いで、その芽を更生させる。更生しないようであれば排除する。出来れば排除したくないのなら、さらに語りに語り継ぐ。
語り継ぐことは、過去と今を生きる私たちの、未来への責務だ。